技術部長挨拶(平成29年度)

技術部長 機械理工学専攻 教授 椹木哲夫

工学研究科技術部は,2007年に発足,2015年10月に改組があり,現在は,「地球建築系」,「機械工作系」,「物理系」,「化学電気系」,「共通支援」の5つのグループからなる組織構成の下,教員,事務組織と連携して様々な教育研究支援活動を実施しています.その業務は,学生教育の実験実習の支援,教員の研究遂行を支援するための製作測定技術の開発や実験装置の運用管理をはじめ,工学全体のインフラに係る環境安全衛生管理や情報システムの管理など多岐に渡ります.加えて, WEBを利用した技術相談や物品貸出等のサービス業務も行っており,学内の教員・学生のみならず,広く社会からの多様なニーズに応えていくべく,新しい技術の習得および実践に努めています.

工学研究科技術部は現在40名 たらずの技術職員からなります.これまでの技術職員は,ともすれば教育研究活動の支援業務という側面だけに目が行きがちでしたが,最近では,大学という高等教育機関の中での技術職員の組織がどうあるべきか,高度化・専門化する技術や先端機器をカバーして行くための人材育成をどのように進め,複合化する技術に対応して行くための技術職員相互の人材交流の機会をどのように設けて行くか,等についての技術の運営・管理全般にも広く関わって行くことが求められています.

ところで,「工学は実学である」とはよく言われてきたことです.最先端の研究成果を実際に世の中・実生活に役立たせることを目的とした学問であることを特徴付ける表現ですが,このような工学が生み出す成果のみならず,工学が実践するプロセスそのものの特徴をも言い表していると思います.それは別の言葉で言えば"三現主義",すなわち実際に"現場"で"現物"を観察し,"現実"を認識した上で問題解決を図るという考え方です.最近のIoT(Internet of Things)やCyber-Physical System という概念に代表されるように,次世代のモノづくりでは,実世界との関わりを意識し,サイバー空間でのシミュレーションやコンピューティング能力を組み合わせることで,生きた情報活用による現場中心の問題解決を効率化し,社会的な課題を解決して行くことが求められています.そこでは設計段階で想定していた問題以外に,実験に移し現場での稼働環境のもとで新たに発生する問題や,機器を利用することによって見出される新たな問題の発見が,研究を前に進めて行くために不可欠となります.この意味から,技術職員の役割は,単に教育研究の支援や下支えだけではなく,まさに研究室での教育研究と協働して行く役割が求められることになります.

技術部長の職責として,技術部の活動が教員,事務職員の皆様との緊密な連携のもとにますます充実したものとなり,大学の教育研究活動に一層貢献できることを目標にして,微力ながら努めて参る所存です.皆様のご支援とご指導ご鞭撻をお願い申し上げます.