技術部長挨拶(平成25年度)

技術部長 高分子化学専攻 教授 吉﨑武尚

 「工学部及び工学研究科の教育、研究に係る技術業務、技術開発並びに教育研究現場の情報及び環境安全等に関する業務を円滑に行う」(京都大学工学研究科技術部組織規程、第2 条)ために工学研究科技術部が発足したのは橘邦英名誉教授が技術部長を務められた2007(平成19)年春のことです。遡ること16 年、1991(平成3)年には京都大学総合技術部が設置され、部局に専攻横断的な技術部を設置することが提案されました。しかし、当時の技術職員は専攻、研究室との個別的なつながりが強く、直ぐに研究科全体を支援する組織的体制へと移行するのは困難でした。そうした中、1993(平成5)年に工学部技術部長が委員長を務める工学部技術研修実行委員会が設置され、技術職員の組織化の促進が図られました。その後、2003(平成15)年の桂移転、その翌年の国立大学法人化を境に研究科の状況は大きく変わり、加えて情報、環境安全など、それまでになかった業務が大量に発生しました。状況の変化が技術職員の組織的活動を望む中、2006(平成18)年、西本清一名誉教授が技術部長のときに技術職員問題作業部会が設置され、続く橘技術部長の粘り強い調整を経て発足に至りました。同時に、それまでの工学部技術部長は工学研究科技術部長となりました。

 技術部発足に伴い、40 名余りの技術職員は「総合建設」、「設計・工作」、「分析・物質科学」、「情報」、「環境・安全・衛生」の五つの技術室のいずれかに配属され、従来の専攻業務に加えて研究科全体の業務を分担することになりました。そのような業務内容の急激な変化は取分け年配の技術職員にとって大変であったと想像されますが、橘技術部長とそれに続く谷口栄一、北野正雄技術部長の指導の下、専攻横断的な組織としての機能を年々高めてきました。発足の翌年には早々に「桂ものづくり工房」が開設され、研究科全体に対する金属加工の技術指導を始めました。また、附属情報センター、附属環境安全衛生センター、桂地区寒剤供給施設の業務を担い、教育研究の基盤を支えています。さらには、発足以来14 名の技術職員が新規採用されましたが、彼らへの新人研修が年々組織的なものになり、内容も充実してきています。未だまだ発展途上であり、十分には機能していないことは否めませんが、自律的な高度技術支援組織へと着実に歩を進めています。

 歴代技術部長の挨拶の中で何度も繰り返されているように、教員に比べて少ない技術職員が組織的に技術支援を行うことで人的資源不足を補い、自らの技術水準を維持し、さらに向上させていくことは、研究科の教育研究の発展に必須だと思われます。技術部がそのように機能するためには、教員、事務職員の皆様との緊密な連携が必要です。それには相互の意志疎通をより円滑にすることが望まれますが、そのための潤滑剤となるよう努めたいと考えていますので、皆様のご支援とご指導ご鞭撻をお願い申し上げます。