技術部長挨拶(平成19年度)

技術部長  電子工学専攻  教授 橘 邦英

 

橘技術部長 工学の関わる科学技術は、個々の人間の生活だけでなく人間社会や地球環境への影響が極めて大きいため、その学術的な面での発展だけでなく、社会や環境への調和に配慮した展開をはかっていく必要のある学問領域であるといえます。また、国立大学の法人化にともなって、各大学の社会的責務や個性的な展開がより強く求められてきております。

 このような状況において、特色ある工学の教育研究を推進していくためには、直接教鞭をとる全ての教員に一層の努力が必要であるだけでなく、事務職員と技術職員の強力な組織的支援が必要不可欠であることは言うまでもありません。とりわけ、これまでにそのような支援体制を研究科全体で構築してこなかった技術系の職員については、早急に体系的な組織化を進めて支援体制を強化していくことが最重要課題となってきています。その理由としては、定員削減による総体的なマンパワーの減少に加えて、研究科に共通であり、また、大学の危機管理とも直結する情報関係および環境・安全・衛生関係の業務の比重がますます大きくなってきている状況があります。この難問に立ち向かっていくためには、限られた人的リソースの制約の中で、より効率的な技術職員の組織を構築し、その効果的な運用によって質・量ともに従来以上の技術支援ができる体制を整えていくことが肝要です。その一方で、新しい組織は高度な技能の伝承と若手の人材育成が可能な仕組みを備えていることも重要な条件になります。そのためにも、個々の技術職員の自己啓発に対する意欲を奨励し、適切な処遇が可能になるようなキャリヤパスの構築も必要と思われます。

 これらの重要課題については、前任の技術部長の時代から引き続いて取り組んできており、今般、その組織化の第一歩として、技術部の中に5つの技術室を設けて、同種あるいは近い内容の技術に携わる技術職員を分属することから始めました。この新しい組織は自己研鑽の支援や技術の継承を効率的に促進し、多角的な視野から職務評価や共通業務の公平化などをはかるために活用していくことを目指しています。従って、実際に日々の教育研究支援業務を行う組織や場所とは別のものであり、いわば、本籍と現住所あるいは派遣元の会社と派遣先の職場のような関係に例えることができるかも知れません。

 近い将来には、技術室をさらに実質化していくと共に、研究科のセンター群を拡充して、分析・解析センターや設計・工作センターなども新設していくことが、組織化に伴う次のステップとして、また技術支援の質と量を向上させていく上でも、ぜひ必要でではないかと思っています。いずれにしても、日常業務の中で個々の技能の向上をはかりながら、よりよい技術支援のあり方を検討している技術部の活動に対して、皆様の一層のご支援をお願い申し上げます。